
インプラントには、もともと医学用語で「植立する」という意味があります。
失われた歯の場所に歯根の代わりになる人工の歯(インプラント)を埋め込み、その上に歯を取り付ける治療法を「インプラント治療」といいます。
インプラントは「第2の永久歯」といわれるほど、機能的にも、見た目的にも、天然の歯にもっとも近いものです。
最近話題になっている心臓移植や肝臓移植は、ドナーという臓器提供者がいて初めて成り立つものです。それを医学用語でトランスプラント(移植)といいます。
一方、インプラントは生体にとって無刺激・無毒で、体に適応しやすい性質(生体親和性)の高い人工的なものをその臓器の代わりに使います。
例えば、人工腎臓や人工関節などが、それにあたります。
歯科インプラントも同じように歯の代わりをする金属(チタン)などの人工素材を利用しています。
他の治療法との比較
■ブリッジ・入れ歯について
これらの従来の治療法は、両隣の歯を削って人工の歯をかぶせます。
メリット |
デメリット |
・保険治療を行える場合、費用が安くすみます。 |
・削って被せた歯またはバネがかかっている歯に過重な負担がかかり傷む可能性があります。
・歯根のない歯茎は、噛むことによる刺激がないため、次第にやせてしまいます。 |
■インプラントについて
インプラントの場合は該当箇所に直接インプラントを埋め込み、その上に人工の歯冠を固定します。
メリット |
デメリット |
・周りの歯を利用しないため健康な自分の歯を保てます。
・骨を刺激することが可能になります |
・保険対象外につき、費用が他の治療法よりも高額になります。
・手術が必要になります。
・インプラント治療終了後も、定期検診が必要です。
・感染に注意が必要です。 |
特殊な治療法
■ソケットリフト
上顎の奥の骨が薄い時に、鼻の空洞の中を持ち上げ、そこに骨を追加してインプラントを同時に埋め込む方法です。
上顎にインプラント治療を行う場合、問題となってくるのが上顎洞の位置です。上顎洞とは、左右の鼻の奥に広がる大きな穴のことです。この形は人により千差万別で、大きい人もいれば、小さい人もいます。その上顎洞の底の部分は、上顎第一大臼歯の根が、最も接近しているといわれています。
ですから、上顎洞底の薄い方が風邪を引くと、上顎洞が炎症を起こし、それが第一大臼歯の根にまで波及するため、「風邪を引くと歯がうずく」ということが起こるほど、密接な関係にあります。
骨の量が十分ある場合は問題ないのですが、骨があまりない場合は、上顎洞の粘膜の下に、骨になる材料(自家骨等)を置き、固まるのを待たないといけません。
インプラントを植込む穴の奥に、将来骨になる物質を入れ、少しずつ上顎洞粘膜(シュナイダー粘膜)を上げていきます。 そして、それが完全に骨になるのを待って、上に歯を作っていきます。
■抜歯即時インプラント
歯を抜いたその場で、インプラントを埋入する
通常は歯を抜いて1ヶ月~2ヶ月間、場合によってはそれ以上の期間を置いてからインプラントを埋入します。
インプラントを行う際には骨の状態が大切で、それがある程度回復するまで待つ必要があるからです。
しかし、なるべく痛みを少なく、手術の回数・治療期間を少なくすることは、患者様にとってたいへん大きなメリットになるので、歯を抜くと同時にインプラントを埋入する方法が良い場合があります。
歯を抜くと、そこには大きな穴が空いています。
- 【埋入】
- 通常、この歯を抜いたあとの穴が塞がるまで数ヶ月要します。
つまり、歯を抜いてからインプラントを埋入し、実際に機能させるまでに半年以上かかる場合がほとんどです。
この手順が、抜歯即時インプラント法を用いれば約半分の期間で治療を終える事が可能です。
- 【結合】
- 歯を抜いたその場でインプラントを埋入し、インプラントと歯を抜いた際に出来た空洞に人工骨を入れ、傷口を縫合します。
人工骨はやがて自分の骨となり、インプラントと結合します。
骨とインプラント体は強固に結合するので、このまま数ヶ月待ちます。
- 【取り付け】
- 数ヵ月後、骨とインプラントが結合し、インプラント体に上部構造(歯の部分)を取り付けます。
見た目や機能はご自分の歯と何ら変わりなく、快適にご使用頂けます。
この後はインプラントに異常が起こらないよう、3ヶ月~6ヶ月に1度メンテナンスにおこし下さい。
インプラントが劣る点

「誰にでも治療できる」という観点において、インプラントも多くの人に対して治療が可能でありますが、入れ歯や義歯と比べると身体的な条件がでてきます。
インプラントは事前の検査で、顎の骨の量が少ない人には向かないとされます。
特に、重度の糖尿病患者の人にも治療を見合わせる場合があります。
これは(麻酔を使って)歯ぐきを切ったりする為、身体的負担が入れ歯よりも高いからです。
また、インプラントは顎の骨に直接埋める特性上、アフターメンテナンスを年1回以上の頻度で行う必要があります。担当医に問題が起きていないかという検診を受ける手間がかかります(しかしこの手間も毎日着脱して洗浄する負担と比べれば軽いものと考えます)。
インプラントの料金
インプラントは、保険が適応されない自費での治療です。
インプラントの良い治療を行おうとすれば、時間と手間がかかり、材料費も高価になりますので、自費負担での費用はどうしても高くなります。
当院ではインプラント本体1本170,000円(税抜)ですが、その上の補綴物(被せ物)は別途になります。材質により利点欠点がありますので違いを理解していただいた上で決定することになります。
欧米やアメリカでは治療費に関しては、全て自費治療です。
特にアメリカの費用は、日本の保険の金額の5~10倍するので、特別インプラント治療が高価というわけではありません。
世界では、日本の10倍以上の患者様がインプラントをしています。
当院のインプラント(カルテシック)について

ハイドロキシアパタイト・コーティングが特徴のアメリカZimmer製インプラント。
整形外科材料メーカーのZimmer社の子会社Calcitekが製造。
独自のハイドロキシアパタイト・コーティング技術MP-1は強力で剥がれにくく、他社のそれとは一線を画します。
パーツやコンセプトの古さは否めませんが、日本人に多い骨が極端に痩せているケースや即時インプラントに最適で、近年日本では注目されています。その反面、骨が厚い傾向の欧米では全く人気がありません。
アバットメントのズレを固定する独自のスリット構造は精密で、特に最近求められるロングスパンのブリッジには効果が高く再製率は低めと言われています。
HAコーディングとは
HAインプラントはチタンの表面に使われている材料がハイドロキシアパタイトと呼ばれ顎の中で積極的に骨と結合しようとする生体活性材料です。
(※ハイドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで、 エナメル質は97%、象牙質の70%がハイドロキシアパタイトで構成されています。)
歯磨粉に配合されたりしています。 エナメル質の表面には見た目には分からない小さな傷のようなもの(微小欠損」が 無数にできています。
虫歯につながります。 虫歯はエナメル質が溶け始めることにより始まります。
ハイドロキシアパタイトは唾液中のミネラルイオンに作用して、 初期虫歯や、微小欠損の再石灰化を促進することができます。
コーティングは剥がされるのではないか?感染しやすく進行が早いのではないか? などといった疑問の声が聞かれますがHAインプラントの臨床はすでに15年を経過しています。
HAインプラントによる使用率・支持率は米国でも予想以上に高く、 特にカルシティックHAインプラントの治療成功率は99.5パーセントです。
HAインプラントと骨との結合はチタンのオッセオインテグレーションとは異なります。
オッセオインテグレーションとは実際には骨とインプラント体の結合がなく、 下の顕微鏡の写真でもわかるようにすき間が少しあいていることがわかります。
HAインプラントはバイオインテグレーションといい、 周囲骨との間にはカルシウムが沈着し顕微鏡でみるレベルでも骨と生化学的に結合します。
HAコーティングインプラントが素材として優れている理由にはまさにこのバイオインテグレーションによるものです。
